Loading
menu close
コラムColumn

ガラスシェードの種類~製造方法・材料/特色・歴史~

ランプシェードは素材や形によって空間に様々な陰影を作り出すのが魅力です。ランプシェードの中でも最も種類の多い ガラスシェードの種類や特徴、歴史をご紹介いたします。

ランプシェードには様々な素材が使われていています。その素材には紙・布・革・木・ホーロー・陶器・ガラス・銅などの金属製の物 があります。光を通さない木・ホーロー・陶器・金属などはシェードに光を反射させ照射範囲を広げたり天井やランプ下の空間や手元を照らす間接照明として、光を通す布・紙・革・ガラスなどは シェードの周りに柔らかな暖かい陰影を映し出してくれます。中でもガラス製のシェードは最も種類が多く、様々な形や色彩の物が灯りの歴史と共に世界中で作られました。ガラスシェードの種類とその歴史や特徴をご紹介いたします。

ヴァセリンガラス

1800年頃ボヘミア地方(現チェコ)で発明されたガラスでブラックライト(紫外線ライト)を当てると幻想的な美しい蛍光色を発します。その独特な色を出すために極微量のウラン鉱石をガラス原料に混入させたガラスで別名「ウランガラス」とも呼ばれています。主に1830年頃から1940年頃までの間ヨーロッパを中心に生産されていましたが、1940年以降になると民間でのウランの利用が制限されたため一時は製造を許されていませんでした。現在ではアメリカのアートガラスメーカーのフェントン社にボイド社とチェコの一部の地域、日本では岡山県の人形峠などで一部の収集家向けに作られているだけで大変稀少価値の高いガラスです。

オパールセントガラス

アメリカの有名な宝石商ティファニー家のルイス・コンフォート・ティファニーによって19世紀末に開発されたガラスで、動物の骨灰(リン酸塩)・亜砒酸・蛍石・硅弗化ソーダなどをガラス原料に溶解し急冷して再加熱すると、青白い艶を抑えた不透明から半透明の乳白色のガラスが出来上がります。 この技法を「オパールセントガラス」といいます。これに酸化金属を入れる事により光の加減や角度でピンク、ブルー、コバルト、黄などを虹色に発色し鮮やかな表情を楽しませてくれます。

フロストガラス

透明ガラスの表面をフッ素による化学変化ですりガラス状に加工したガラスでサンドブラスト(砂)による物理的な加工方法に比べ、割れにくく汚れにくい特長があります。1845年にガラス税が撤廃された事により店の窓も大きくなり外からの明るさが獲られた一方、室内が丸見えだったためプライバシーの確保や店舗の装飾としてフロストガラスやカットガラスの技法が開発されました。照明器具としてはビクトリアンやエドワーディアン時代のその柔らかな灯りが店などで好んで多く取り入れられ普及しました。

クランベリーガラス

名前の由来となるクランベリーとは食用となる蔓苔桃のことで、その鮮やかな赤い実の色からその名前が付きました。また宝石のルビーの色彩に似ている事から「ルビーガラス」とも呼ばれています。和名では「金赤ガラス」と言われその名の通り原料に金が使われているため非常に高価で大量生産されにくい稀少なガラスなのです。その金の含有量によって透明感のある薄い赤や深みのある濃い赤いガラスを作る事ができます。その起源は1600年代と言われていますが、“ラルテ・ヴェトラリア(ガラスの術)”の著者アントニオ・ネリが「ルビーの原石のような」ガラスの製造法を発見したという説と、ボヘミアでその製造法が発見されたとされる説がありコレクターの間でも見解が分かれています。

ムラノガラス

ムラノガラスとはヴェネチアンガラスの別称で、ヴェネチア島から1.5kmはなれたムラノ島で伝統的に製造されたガラスをイタリアでは本物として区別的にムラノガラスと呼びます。古代ローマ時代に発明されたローマンガラスが起源で東西交易の中継点として栄えたヴェネチアに早くからイスラムのガラス製法が伝えられました。11世紀になるとヴェネチアンガラス製造も更に活発になり、13世紀末には「アドリア海の女王」と称されたガラスの製造技術の流出を恐れたヴェネチア共和国政府が、「マエストロ」と呼ばれるガラス職人を家族まで含めて強制的にムラノ島に移住させました。その後職人たちが島から出ることを禁じ排出的に継承されヴェネチアンガラスのメッカとなりました。16世紀末に発明されたクリスタルガラスとは異なり鉛を含まないソーダ石灰ガラスで軽く、これに金属酸化物を混ぜる事により多彩な色のガラスを作る事ができます。穏やかで温かみのある透明感と極めて多彩な色はムラノガラス特有のものです。

ミルクガラス

ヴェネチアで14世紀に不透明な白色グラス(ミルクグラス)が作られたのが最初と言われています、ミルクグラスが作成されたきっかけは明(現中国)の磁器の影響で、当時のヨーロッパでは明の磁器のように硬い素材を作り出すのは難しくそこで考え出されたのがガラスをその代替品にすることでした。こうして作り出されたミルクグラスは摸造磁器と呼ばれていました。ガラスの原料に酸化錫・アンチモン・亜鉛・骨灰などの乳濁剤を混ぜ合わせて陶器の様に白いミルクガラスが作られます。練りムラや歪みやヘラの跡など当時の技術ならではの味わいがありぼってりとした厚みがアンティークミルクガラスの魅力です。

コラム一覧へ戻る